「違反が多い国・会社」は危ないのか——食品の違反件数を読むときに気をつけていること
当サイトには、輸入食品の違反8,931件、自主回収645件、食中毒533件などの記録があり、国別・会社別・自治体別に件数を並べたページもあります。並べると、どうしても「件数が多いところは危ない」と読まれがちです。
運営者としては、この読み方をしてほしくないと考えています。この記事では、件数が何を表していて何を表していないのかを、当サイトのデータを使って説明します。
輸入違反:件数は「どれだけ入ってきて、どれだけ調べられたか」に比例する
厚生労働省が公表した輸入時の違反8,931件(2015〜2026年度)では、上位3か国の中国(24.4%)、アメリカ(12.7%)、ベトナム(9.2%)で全体の46.3%を占めます。
この数字だけ見ると、その3か国の食品が危ないように見えます。けれども、違反は 検査を受けた輸入品の中からしか見つかりません。 日本への食品の輸入量が多い国ほど届出も検査も多くなり、見つかる違反の件数も増えます。違反の件数を比べるなら、本来は「輸入量や検査数あたり」で比べる必要があります。当サイトはその母数を持っていないので、比べた数字は出していません。
自主回収:回収したことは、問題を隠さなかったことでもある
自主回収は行政処分ではありません。事業者が自分で問題に気づいて、または指摘を受けて、商品を引き上げる是正の行動です。
記録した645件の回収理由は、多い順に期限・日付の誤表示(16.4%)、アレルゲン表示の欠落・誤表示(15.8%)、微生物(15.7%)でした。印字の誤りのように健康への影響が小さいものから、アレルギーのある人には深刻なものまで幅があります。公表文に「健康被害」という語が出てくる回収は、全体の約半分(49.8%)でした。
回収の件数が多い会社は、品目数や生産量が多い会社かもしれません。小さな表示の誤りでも回収を選んでいる会社かもしれません。件数からは、そのどちらなのかを区別できません。
食中毒:件数の差は、自治体の「載せ方」の差でもある
自治体が公表する食中毒の表を並べると、記録に占めるアニサキスの割合は明石市の0%から相模原市の68.8%まで開いています。1件あたりの患者数にも14.5倍の差があります。
これは、地域によって魚の安全性が違うという意味ではないと考えています。アニサキスは患者1人の事件が大半なので、自治体がその1人の事件まで表に載せているかどうか で数字が大きく動きます。件数の差は、発生の実態より先に、公表の粒度の違いを映しています。
当サイトが件数を並べている理由
それでも件数を並べているのは、次のような使い方に役立つと考えているからです。
- 取引先や仕入れ先の担当者が、過去の公表記録を 漏れなく確認する ため
- 報道や研究で、公表された事実を 出典付きで引用する ため
- 公表がいつ・どこで・どのくらい出ているかという、制度の動き方を見る ため
「この会社は危ない」「この国の食品は避けるべきだ」という判断をするための材料としては、件数だけでは足りません。当サイトは公表された事実をそのまま残すアーカイブです。善し悪しの評価はしていませんし、するつもりもありません。
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